Manorama [1DVD]

ラジャスタンの小さな町で公務員を務めるかたわら、売れない探偵小説を書いているＡ・デオール。ある夜、彼はマノラマと名乗る見知らぬ女（サーリカ）の訪問を受ける。女は州の灌漑大臣の妻で夫の浮気の証拠撮影を依頼したいと言うのだ。仕事を受けたデオールはネガを女に渡すが、女は交通事故で死んでしまう。「これは殺人ではないのか」。デオールは直感に導かれて事件に深入りしていくが...、といったお話。
ネタ素を特定できませんが、おそらくハリウッド映画から頂いて脚本書いたんだろうな。いかにもアメリカ人好みの探偵物語まんまです。ですがネヴァダ辺りの砂漠をラジャスタンに、中古のアメ車をぽんこつバイクに置き換えただけで、あ〜ら不思議、すっかりインドの探偵映画になっている。この作品意外な拾い物でとても気に入っています。
インド版「白いドレスの女」＝「Jism」（03年）は、ニューオルリンズをフランスつながりで南インドのポンディチェリーに置き換え頑張ってましたが、スター映画でもあり、まだまだボリウッドな気分の作品でした。こちらは荒涼とした砂漠の風景がアメリカンな筋運びにぴったりマッチしていますし、売り出し中のアバイも含め、派手な役者をキャスティングせず、あくまで渋く迫ったのが成功の原因かと思います。アメリカナイズ＝自由とは決して思いませんが、伝統のみにとらわれるのでなく、自由に自分の人生を切り開いて生きたいというインド都市生活者の新しい思潮を反映した作品とも受け取れ、そういう点でも味わい深いインディアン・ニュー・シネマです。
他の出演は、デオールの妻役にＧ・パナーグ、事件の鍵を握る女にＲ・セン（←ライマの方ね）、灌漑大臣にＫ・カルバンダ、そしてデオールの兄で警部のＶ・パータク。ミュージカルシーンは無く、適度なテンションと心地よいテンポの２時間ちょい。ボリウッド・ファンにもそうでない映画ファンにも観てもらいたいちょっとした作品です。